WikiLinkGame の題材である Wikipedia のリンクは、よく見るとかなり個性的な「地形」をしています。どの記事も同じようにつながっているわけではなく、リンクが集中する場所もあれば、ほとんど孤立した場所もあります。この地形を知っておくと、ゲームの見え方も変わってきます。今回は、Wikipedia のリンク構造の面白いところをいくつか紹介します。
まず基本から。Wikipedia のリンクには向きがあります。記事Aの本文に記事Bへのリンクがあっても、BからAへのリンクがあるとは限りません。たとえば、ある俳優の記事は出演した映画の記事にリンクしていても、その映画の記事には共演者が多すぎて、その俳優の名前が本文に出てこないかもしれません。行きは1クリックなのに、帰りは何クリックもかかる——リンクの世界では、こうした「一方通行」が当たり前に起こります。WikiLinkGame の正解判定も、この向きを正確に扱っています。お題から選択肢への向きで2クリック、が条件です。
次に、リンクの「数」です。記事が持つリンクの数を調べると、極端な偏りが見つかります。大部分の記事は数十本程度のリンクしか持たない一方で、ごく一部の記事には桁違いの数のリンクが集まります。「日本」「アメリカ合衆国」のような国の記事、年の記事、大都市の記事などは、何十万という記事から参照される巨大な結節点です。こうした偏りは、少数のハブが全体を支える構造として、Web全体やSNS、航空路線網など多くのネットワークに共通して見られます。Wikipedia のリンク網は、世の中のネットワークの縮図でもあるのです。ハブをゲームの攻略にどう活かすかは、こちらのコラムで紹介しています。
もうひとつ、見落とされがちな点があります。Wikipedia のリンクは機械が張っているのではなく、人間の編集者が「この言葉は読者が調べたくなるはずだ」と判断して張っているということです。どの言葉をリンクにするかには、書き手の感覚やコミュニティの慣習(初出のみリンクする、ありふれた一般名詞はリンクしない、など)が反映されます。つまりリンク構造は、無機質なデータではなく、無数の編集者の判断が積み重なってできた「知識の地図」です。WikiLinkGame で「意味は近いのにリンクでは遠い」という現象が起きるのも、地図が人の手で描かれているからです(このゲームが難しい理由も参照)。
この地図の上を、お題から2歩だけ歩く——それが WikiLinkGame です。1歩目でハブに乗れば行き先は一気に広がり、マイナーな記事に踏み込めば道は細くなる。遊びながら、「この記事はどれくらいのハブだろう」「どっち向きのリンクだろう」と考えるようになったら、あなたはもうリンク構造の面白さに気づき始めています。答え合わせのあとは、ぜひ実際の記事でリンクの張られ方を観察してみてください。知識の地図は、歩いた人にだけ地形を見せてくれます。