「六次の隔たり」を実験した人たち
— 手紙からSNSまで

「知り合いを6人たどれば、世界中の誰にでもつながる」——いわゆる六次の隔たりは、WikiLinkGame の発想のもとになった考え方です(開発の背景はこちらのコラムで紹介しています)。ではこの「6人」という数字、いったい誰が、どうやって確かめたのでしょうか。今回は、世界の狭さを本気で測ろうとした人たちの話です。

始まりは1960年代の「手紙リレー」

この分野でもっとも有名なのが、1960年代にアメリカの社会心理学者スタンレー・ミルグラムが行った実験です。方法は今から見るとかなりアナログで、アメリカ中西部に住む人たちに手紙を渡し、「東海岸に住むある人物に、この手紙を届けてください。ただし、直接送ってはいけません。知り合いの中で、その人物に近そうな人に転送してください」と頼むのです。手紙は知り合いから知り合いへとリレーされ、ゴールの人物へ向かっていきます。

届いた手紙が経由した人数を数えると、平均でおよそ6人前後だったと報告されています。「六次の隔たり」という言葉のもとになった実験です。ただし、この実験には途中で止まってしまった手紙も多く、「本当に世界は6人でつながるのか」については、その後も研究者の間で議論が続きました。それでも「思ったよりずっと少ない人数でつながるらしい」という発見のインパクトは大きく、のちのネットワーク科学の出発点のひとつになりました。

SNSの登場で「全数調査」が可能に

手紙の時代から半世紀。SNSの登場によって、状況は一変します。人間関係そのものがデータとして記録されるようになったため、サンプル調査ではなく、ネットワーク全体を直接測れるようになったのです。2000年代にはインスタントメッセンジャーの利用者数億人規模のデータで平均距離が6台半ばと報告され、2010年代には大手SNSが十数億人の利用者どうしの平均距離を4より小さいと発表しました。世界人口の相当部分を含むネットワークで、隔たりは6どころか4を切っていた——世界は、ミルグラムの想像よりさらに狭かったわけです。

なぜこんなに「近い」のか

直感的には不思議です。1人の知り合いはせいぜい数百人。それでも数十億人のネットワークが数ステップでつながるのは、遠くへ橋を架ける「ショートカット」の存在が効いています。ほとんどの友人関係は地元や職場に閉じていても、中には「海外に友人がいる」「まったく別の業界に知り合いがいる」という人がいます。こうした少数の長距離リンクが、離れた集団どうしを一気に近づけるのです。局所的には密で、全体としては近い——この性質はスモールワールド性と呼ばれ、人間関係だけでなく、送電網や神経回路、そして Wikipedia のリンク網など、さまざまなネットワークで見つかっています。

Wikipedia でも同じことが起きている

Wikipedia の記事どうしも、リンクをたどれば驚くほど少ないクリック数で行き来できます。英語版 Wikipedia では、任意の2記事間の平均クリック数を測る試みが繰り返されていて、おおむね数クリック程度とされています。「どの記事からどの記事へも6クリックで行ける」という話を聞いたことがある人もいるかもしれません。記事から記事へ渡り歩く途中には、必ずと言っていいほど国名や年代のようなハブ記事(多くの記事とつながる結節点)が現れます。このハブの働きについては、攻略のコツのコラムで詳しく紹介しています。

WikiLinkGame で出題される「2クリック」は、この壮大なスモールワールドの、ほんの入り口の距離です。それでも、まるで関係なさそうな2つの記事がつながっていて驚くはずです。世界の狭さを、クイズで体感してみてください。

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